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幻想世界シルフィネス過去編第一弾

 

 

ユーソフィア大陸に魔物が現れるおよそ100年前の話。

大陸で一番大きな都市が存在していた。

それは『機械都市インティモーラ』

そこには、数多の研究員達が集い、多くの人々が暮らしていた。

その都市だけ機械が非常に発展しており、人はその機械に頼って生きていた。

 

日々、便利で良い機械を作るのに専念していた研究員達は、

途中で道を外してしまう。

それは、”人造人間を造る”という夢を抱いてしまったから。

反対する研究員は強制的に追い出され、それに賛成した研究員達が集まり、

人造人間を造り始める。

 

しかし、日々失敗の繰り返しだった。

失敗といっても、人型で会話もできて頼めばある程度の事はできるが、結局はロボットでしかない。

研究員が求めているのは、”人のような感情を持った完璧な人造人間”

もはや、人の為ではなく、己の欲求や夢の為、周りが見えなくなってしまっていた。

完璧な人間など造れるはず無いと、少し思っていたとしても、研究を始めてしまったらもう止められない。誰にも。

そうして感情のない人型ロボットの失敗作達は、焼却炉で燃やされるか、街の店で売られ、人々の道具になるかだった。

 

ある時、二人の少女が造られた。

彼女達は、研究員にとって良い成果が期待されていた。

一人は「ミルネア」もう一人は「ゼロナ」と名付けられ、研究所の一角にある小さな部屋で過ごさせた。

1日に2~3回、決まった時間に、情報や知識のインプット・点検・記憶処理機能の増加実験等で、部屋から連れ出される。

何ヶ月か経っても二人の表情の変化はなかった。

何か方法は無いかと悩んだ研究員達だったが、モニターに映し出された少女達の部屋で、ある変化が起きる。

それは、”古びた絵本”を見つけていたのだ。

そこの部屋には、本来絵本は置いていないはずなのに。

研究員達はお互いに疑いをかけたが、誰も置いていないと断言。

モニターに映る少女達は、今まで全く表情を見せなかったはずなのに、絵本を見る顔が、少し微笑んでいた。

それを見た研究員達はたちまち喜び、感激した。

 

そして、少女達は、毎日のように絵本に夢中になった。

その絵本は鮮やかな色彩で描かれていた。

なかでも、緑の木々や山、揺らぐ色とりどりの花々が美しく描かれた壮大な風景が1番強く目に焼き付いた。

少女達は、この研究所の外を全く知らないが故に、想像を膨らませるようになる。

この幻想的な、絵本のような世界が外に広がっているのではないかと…。

もし、出られる時が来たら二人で一緒に見てみたいとお互いに強く願った。

 

しかし、そんな幸せな日々は長くは続かなかった。

少女達の長期に渡る研究が終わったのだ。

二人は部屋から出され、一緒に外に出られるのかと思いきや、

別々になってしまう。

ミルネアは、全てにおいて今まで以上の研究成果が見られ、お金持ちの貴族に買われたが、

人間の道具としての生活は他の人型ロボットと何ら変わりはなかった。

(研究員達はそのお金で今度こそ完璧なる人造人間を造ろうとしていた)

そして、ゼロナは、ミルネアより記憶維持能力が遥かに劣っていた為、焼却炉へ連れて行かれた。

が、不意をついて必死に焼却炉から離れようと走った。

辺りには、燃やされる前の人型ロボット達が呆然と立ち尽くしていた。

そして、都市中心部に着いたところでゼロナは衝撃を受ける。

人間達が、人型ロボットを道具として扱い、使えないと判断された者は暗い路地裏にバラバラに捨てられていたのだ。

 

 

こ ん な 世 界 は 見 た く な か っ た

 

 

ゼロナに怒りと憎しみの感情が生まれる。

それを、何処かに・誰かに・何かに・ぶつけたいと強く求めた。

すると、それに応えるかのように手の平から炎が現れる。

ゼロナは、その炎を利用し、インティモーラの全ての建物・人々を容赦なく焼き尽くした。

そして、人型ロボット達を安全なところへ移動させ、炎の力で大陸からインティモーラを切り離し、浮上させた。

その際に、ミルネアはゼロナに会うが、浮上すると同時に背中を押されミルネアは大陸に落とされてしまう。

燃え盛り浮上するインティモーラを見上げ、ミルネアは必死に叫ぶが、ゼロナは一瞬何か一言口を動かし、すぐに背を向け炎の中へと消えてしまった。

ゼロナはいったい何を言っていたのか、ミルネアは聞き取ることができなかったが、とても辛そうに見えた。

 

徐々に空へ遠ざかるインティモーラ。

ふと、ミルネアの頬に透明な雫が伝った。

そして、止まることなく溢れ出してきた。

ミルネアに悲しみの感情が生まれた。

頬を伝う涙の雫は地に落ち、大陸では幻とされている”シュレイナの花”が、一つ、二つと次々に咲いた。

やがてミルネアの周りは一面の花畑になり、舞い上がる花びらに包まれた。

もう見えなくなってしまったインティモーラを、そこで毎日待ち続けた。

そして、日に日に、強いショックが原因なのか、生まれた感情によるものなのか定かではないが、ミルネアの記憶が少しずつ消えていった。

あの日、二人で過ごした幸せな日々が巡る。

 

一緒に居た子は…誰だっただろうか…?

 

分からなくなって、また涙が溢れる。

何度も何度も、朝と夜を繰り返す。

次第に全身の機能が低下し、全く動くことができなくなった。

記憶を失ってきてもなお、空を見上げ、待ち続ける。

何を待っているのか、なぜ空を見上げているのかも、もう分からない。

 

やがて意識が朦朧とし、記憶の全てが消え去ってしまった。

 

私は…だ…れ…?

 

最後の問いにも、返答する者は誰一人いない。

 

そして、ミルネアは静かに目を閉じた…。

 

 

 

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<用語など追記>

 

 

★この世界は、何かを強く願った者に力が宿る。

 

 

★シュレイナの花=勿忘草

花言葉は、【私を忘れないで】

 

★この世界では、人造人間は、ヴィンテと呼ばれている。

 

 

 

 

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